町営ドッグラン(令和4年4月1日オープン)に関する考察
令和7年11月13日に私のところに、利根町在住のある方から「町営ドッグランについて教えてほしい」と連絡がありました。
「峯山さん 教えて下さい。
利根川沿い上曽根に公園があります。数年前、公園内で高齢者が利用してたと思われるゲートボール場がありました(自分の思い過ごしかも)。そこを壊して、そこへ突然特定?の方々が利用される、町営ドッグランなるモノが出来ました。
「知らぬは自分(ばかり)だけ(無知なだけですが)」
そこで、お尋ねです。『町営ドッグラン』なるモノが出来た経緯を教えて下さい。もしよろしければ、分かる範囲で結構です。
「ドッグラン」なるモノは犬にかかわる方(のみ)しかませんヨネ。「モノ」が出来る事、町民の総意だったのでしょうか?」
このような内容の問い合わせでした。
早速、過去の議事録や資料を調査して私なりに利根町町営ドッグランについてまとめてみました。
利根町の町営ドッグランは令和3年第3回利根町議会定例会において、議案第47号利根町一般会計補正予算(第4号)で建設費用990万円が計上されました。最終的に事業費は982万3千円で建設。
当時、町営ドッグランが議論された令和3年9月議会は、私が町長選挙に落選し、無職になった直後に行われていますので、私は議員の職責がなく、この議論には参加することはできていません。
以下、利根町営ドッグラン建設をめぐる議会での議論(理由・疑問点・論点)を体系的に整理しました。
◆1 ドッグラン建設が進められた背景と町の説明
(1)もともと「総合戦略」で新規事業として位置づけられていた
令和元年度の利根町総合戦略(まち・ひと・しごと創生)で、新規事業として提案済み。
しかし当時は、適切な設置場所が見つからず保留となっていた。
(2)設置場所が確保できた
令和3年7月、上曽根運動公園内のグラウンドゴルフ場が町に返還(誰から、どこからかは不明)された。
その敷地を活用できる可能性が生まれ、町が国交省に照会したところ、
「ドッグランの設置は可能」との回答を得たため、事業化を再検討した。
(3)コロナ交付金の使途として合法か確認したうえで事業化
新型コロナ地方創生臨時交付金は、
・感染拡大防止
・事業継続・雇用維持
・感染収束後の地域活性化(アフターコロナ)
まで幅広く使える、という内閣府の運用がある。
町はこれを根拠に、
**「アフターコロナを見据えた地域のコミュニティ形成・経済循環」**として本事業を選択した。
(4)事業目的(町の公式説明)
アフターコロナに向け、野外での新たなコミュニティ形成を生み出す。
利用者の交流増加により、地域経済にも好循環をもたらす。
コミュニティの分散化・屋外活動の促進など、コロナ後の社会環境変化に対応する。
◆2 議員側の主な疑問点・反対意見
議会質疑では、複数議員から以下のような疑問・懸念が示された。
(1)なぜ“ドッグラン”なのか? ― 事業選定への疑問
「990万円もの交付金を投じる選択肢として妥当なのか」(船川議員、井原議員)
「他の支援策が優先ではないか」「事業の意義が不明確」(井原議員)
交付金の自由度が高いといっても、
なぜこの事業なのか説明が弱いという論点。
(2)維持管理・運営コストの見通しに疑問
「無人で運営し、人件費がかからない」と町は説明したが、
職員が草刈り等を行うなら、人件費ゼロとは言えないのでは?(花嶋議員)
雨天・多頭・多犬種など、実際の運営で課題が発生する可能性が高い。
(3)安全管理の不安(もっとも強く指摘された論点)
●防犯・監視体制の不足
24時間誰でも入れるのは危険では?
防犯カメラは必要では? → 町は「電源がなく設置予定なし」。
●狂犬病予防注射の確認
他市のドッグランは管理者がワクチン接種状況を確認している例もあるが、
利根町は確認体制を設けない方針。
「放置すると危険」「咬傷事故時の町の責任は?」と懸念が示された(花嶋議員)。
(4)スペース区分(大型・中型・小型)の適切性
中型と大型を同じゾーンにする理由への疑問(花嶋議員)
「3区画にすべきでは?」という指摘。
(5)コロナ交付金の使い方への根本的な異論
「コロナ対策として妥当なのか」(井原議員)
「感染収束後の地域活性化へ使える」という町説明に対し、
“納得できない”という明確な反対意見があった。
◆3 町の回答(要点整理)
■事業選定の理由
総合戦略の新規事業として計画済みだった。
返還された敷地を活用できる環境が整った。
国交省から設置可能との判断を得た。
コロナ交付金はアフターコロナ事業に使える。
■維持管理コスト
上曽根運動公園は井戸水使用 → 水道代ゼロ。
電気代:公園全体で約2,500円/月(ドッグラン分の増加は小さい)。
無人運営とし、人件費発生なし(職員の草刈りは担当業務として扱う)。
■安全管理(町の考え)
近隣3市(龍ケ崎、守谷、柏)の視察結果では、
どこも防犯カメラなし・予約制なし・接種確認なし。
そのため利根町も同様の運営方式とする、と説明。
◆4 議員別の主要論点(一覧)
町営ドッグランのみではなく、議案第47号利根町一般会計補正予算(4号)としての判断
議員名 主な論点
船川議員(賛成)
・なぜドッグランを選んだか説明要求
・ランニングコストの積算を要求
・交付金の使途範囲の確認
花嶋議員(反対)
・区分は中型・大型を分けるべき
・24時間利用と防犯カメラ不設置への懸念
・狂犬病接種確認を行うべき
・「職員だから人件費ゼロ」はおかしい
井原議員(反対)
・「なぜドッグランなのか」根本的疑問
・交付金の使途として意義が不明瞭
片山啓議員(反対)
・(議事録本文には質疑記録はないが)反対票を投じた立場として、懸念は井原・花嶋両議員と同趣旨と推察される
その他賛成議員
・町の説明を妥当と判断し賛成に回った(山﨑誠一郎議員、若泉議員、大越議員、五十嵐議員、石山議員)
◆5 採決結果(町営ドッグランのみではなく、議案第47号利根町一般会計補正予算(4号)としての判断)
賛成6:反対4 で可決。
議長(当時は新井議員)は採決に加わらず。
賛成:山﨑(誠一郎)議員、大越議員、石山議員、五十嵐議員、若泉議員、船川議員
反対:片山議員、石井議員、花嶋議員、井原議員
<今後の利根町における町営ドッグランのあり方とは?>
◆1 まず論点の整理
ドッグランは明らかに 「利用者が限定される公共施設」 です。
つまり、
・犬を飼っていない町民
・犬に興味がない町民
・高齢者・子どもなど利用対象外の層
は利用しません。
この点で 税金でつくることの正当性が問われるのは当然 の論点です。
◆2 税金投入の正当性を主張する「賛成側の理屈」
【1】“利用者が限定される施設”は他にも多数ある
公共施設の大原則は、
「すべての住民が同じ程度に使う必要はない」 ということです。
例:
・野球場・テニスコート → スポーツをしない人は使わない
・文化センター → 一度も使わない人も多い
・子育て支援施設 → 子どものいない世帯は使わない
・高齢者福祉センター → 若者は使わない
しかし、これらは「全体の福祉増進に資する」として税金で整備されています。
→ “利用者が限定される=税金が使えない” とはならない。
【2】「地域コミュニティ形成」という公共目的
利根町は事業目的として
「アフターコロナのコミュニティ形成」「地域経済への好循環」
を掲げています。
・犬の散歩や交流を通じて、住民同士が顔見知りになる
・公園利用者が増え、周囲の治安や活気が高まる
・イベント(しつけ教室・マルシェ)を開ける
・利用者が町内の店へ足を運ぶ
など、間接的に“まちの賑わい”を生み出す効果が期待できます。
→ “犬を飼っていない住民にも間接的な利益がある” という説明が可能。
【3】「迷惑防止・安全確保」の公共性
実はドッグランにはもう一つ重要な公共目的があります。
それは、
「犬の放し飼い・公園トラブルを減らす効果」 です。
犬を飼っていない人でも、
・公園での放し飼い
・フン放置
・他犬とのトラブル
・子どもが怖がる・事故を避けたい
などの問題は直接影響を受けます。
ドッグランがあることで、町全体の犬トラブルが減るという公共効果は大きい。
→ 犬を飼っていない人も“安心や快適性”という形で利益を受ける。
【4】「資産活用」の視点(上曽根運動公園の空き区画)
もともと返還されたグラウンドゴルフ場は、
・そのまま放置すれば荒れる
・使い道がない
・管理コストだけかかる
という課題がありました。
空き区画を再活用する形で
**「資産の有効活用」**と説明できます。
【5】補助金(コロナ交付金)活用で町一般財源を極小化
利根町の場合、
ドッグラン建設費の990万円の大半は**国の交付金(臨時交付金)**で賄われています。
つまり、
・町の持ち出し(一般財源)は少ない→とはいえ、税金であることにはかわりない
・この交付金は“使える分野に制限がある”
・放置すれば町に入らず国に返る可能性もある
→ 「交付金を無駄にせずに活かした」ということにもなるのでは・・・
◆3 一方で、反対側の理屈(批判の論点)
反対側は次のように指摘します。
【1】利用者が限定されすぎていて、公共性が弱い
→ 子育てや福祉、交通、防犯に回すべきだ。
【2】管理が不十分で、むしろ危険
→ 無人・カメラなし・ワクチン未確認では事故時の責任が曖昧。
【3】アフターコロナの名目がこじつけ
→ コロナ交付金の使途として妥当性が薄い。
【4】コミュニティ形成の成果が測れない
→ 利用者数を把握していない以上、評価できない。
◆4 結論:正当性は「公共性の説明ができるか」で決まる
まとめると、
犬を飼っていない住民が直接利用しなくても、
“まちの安全・快適性・交流促進”の効果が説明できる限り、
税金投入の正当性は確保できる。
特に
■① 犬の放し飼い・トラブル防止(町民全体の安心)
■② コミュニティ形成・交流人口拡大(間接的効果)
■③ 空き区画を活用した資産有効利用(町の資源活用)
ただし、
・管理が弱い
・利用者数を把握していない
・安全対策が不十分
という現状では、政策としての「公共性の証明」が不足しているのも事実です。
犬を飼っていない人も、公園での放し飼いトラブルが減るなど“安心”という形で利益があります。
またドッグランはコミュニティ形成の拠点となり、地域の賑わいや経済効果にもつながるため、公共施設として税金投入の意義はあります。
ただし安全対策と利用実績の把握は、今後の課題です。
また、建設後、オープンする前に利用されない方への説明責任がきちんとされたのかも重要です。
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